山陰亭

原文解説口語訳

『菅家文草』02:123

見渤海裴大使真図、有感  渤海裴大使ぼつかいはいたいし真図しんと を見て、感有り

自送裴公万里行  裴公はいこう万里ばんり たびを送りてより
相思毎夜夢難成  あひ思ひて夜ごとに夢がた
真図対我無詩興  真図しんと  我にむかへども 詩興しきよう無し
恨写衣冠不写情  うらむらくは 衣冠いくわんのみ写してこころを写さざりしことを

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解説

 元慶7(883)年、帰国した渤海大使裴〓はいていを描いた肖像画を前にして詠んだ詩です。時に道真39歳。

 魏の曹植そうしょくに比される即吟の達人相手に、事前準備なし・加筆修正なしの真剣勝負に挑んですっかり意気投合したことは「余、近ごろ『詩情怨』一篇を叙べ、...(2)」の解説にも書きましたが、離京の日が近づいたある日、道真は絵師を呼び、せめてものよすがとして大使の肖像画を描かせたようです。
 それからしばらく寂しくて眠れぬ日が続き、ふと自宅で肖像画を掛けてみたのですが、どうもしっくりきません。生身ではなく平面の人間では、詩を詠んだところで、いくら待っても本韻で詩が返ってくるはずもありませんから。

 精魂を使い果たし、すっかり燃え尽きた感のある道真の心情が窺える詩です。

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口語訳

渤海ぼつかい大使裴〓はいてい氏の肖像画を見、思うところあって(詠む)

(帰国する)裴氏の長旅を見送って以来
(彼を)思って(眠れず)毎晩夢も見られない
肖像画は 私に向かい合うが (絵が相手では)詩を詠む気にはならない
容姿だけ写して心まで写さなかったことが恨めしい

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