山陰亭

原文解説口語訳

『菅家文草』04:298

八月十五日夜、思旧有感  八月十五日の夜、むかしを思ひて感有り

菅家故事世人知  菅家の故事 世人知れり
翫月今為忌月期  月をもてあそぶも 今は忌月の期なり
茗葉香湯免飲酒  茗葉めいえふの香湯 飲酒をまぬか
蓮華妙法換吟詩  蓮華の妙法 吟詩に換ふ
如何露溢思親処  如何いかん せん 露溢れて親を思ふところ
況復潮寒望闕時  況復いはんや 潮寒くしてけつを望む時をや
従始南来長鬱悒  始めて南に来てより とこしへに鬱悒うついふたり
就中此夜不勝悲  就中なかんづく此の夜は 悲しみにへず

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口語訳

八月十五日の夜、昔を思い出して心を動かす

(宴席を設けて八月十五日の月を鑑賞するのは)菅原家の故事だと 世間の人は知っている
(しかし昔こそ)月を愛でたが 今は父の死んだ月だ(から宴は開かない)
香り高い茶を飲んで 飲酒を避け
法華経を読誦して 詠詩の代わりとする
どれほどのものか 露が満ちあふれる(異郷の)地から親を思う気持ちは
ましてや 海が寒々とする季節に都を望み見る時(の切なさ)は
初めて南海讃岐に来てからというもの ずっと塞がった気分でいたが
とりわけ今夜は (月見の詩宴を思い出して)悲しみがこらえきれない

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