八月十五日夜、思旧有感 八月十五日の夜、
菅家故事世人知 菅家の故事 世人知れり
翫月今為忌月期 月を
茗葉香湯免飲酒
蓮華妙法換吟詩 蓮華の妙法 吟詩に換ふ
如何露溢思親処
況復潮寒望闕時
従始南来長鬱悒 始めて南に来てより
就中此夜不勝悲
八月十五日の夜、昔を思い出して心を動かす
(宴席を設けて八月十五日の月を鑑賞するのは)菅原家の故事だと 世間の人は知っている
(しかし昔こそ)月を愛でたが 今は父の死んだ月だ(から宴は開かない)
香り高い茶を飲んで 飲酒を避け
法華経を読誦して 詠詩の代わりとする
どれほどのものか 露が満ちあふれる(異郷の)地から親を思う気持ちは
ましてや 海が寒々とする季節に都を望み見る時(の切なさ)は
初めて南海讃岐に来てからというもの ずっと塞がった気分でいたが
とりわけ今夜は (月見の詩宴を思い出して)悲しみがこらえきれない