山陰亭

原文解説口語訳

『菅家後集』510

問秋月  秋月に問ふ

度春度夏只今秋  春をわたり夏を度り 只今いまは秋なり
如鏡如環本是鉤  鏡のごとたまきの如く 本はれ つりばりなり
為問未曾告終始  ために問ふ かつて終始を告げざるに
被浮雲掩向西流  浮雲におほはれて西に向かひて流るるかと

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解説

 延喜2(902)年秋の作です。
 夜空に浮かぶ月は、丸くなったり細くなったり満ち欠けを繰り返し、季節の推移を絶えず私達に告げます。しかしふと上弦の月を見やると、黒い薄雲に見え隠れしながら西へ押し流されているではありませんか。その様子は、予想だにしない嫌疑を掛けられて突如西府へ追いやられた自分の姿と重なるようでした。

 不意に問いかけられ、さて明夷めいい の月は何と答えたのでしょう? 続く「月に代りて答ふ」を見てみましょう。

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口語訳

秋の月に尋ねる

春を過ぎ夏を過ぎ 今は秋
鏡のように輪のように(丸くなるが) 元々は釣り針(のように細かった)
ちょっとお聞きするが 始まりと終わりを告げることは今までなかったのに
(今は)浮き雲に覆われて西に向かって流れているのか

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