山陰亭

後藤昭雄『平安朝文人志』吉川弘文館 1993

 れっきとした論文集なのですが、印象に残っている一冊なので紹介します。全体の書評は専門雑誌で行われているはずですから、面白い論文をふたつ挙げておきます。

 まず「菅原道真の家系をめぐっての断章(一)」。『菅家文草』02:082「講書の後、戯れに諸進士に寄す」で道真が自らを鄭益恩じょうえきおん(後漢の学者鄭玄じょうげんの子)になぞらえている点に注目し、「玄、唯一子益恩のみ有り」という『後漢書』の記述によって従来の三男坊説を明快に否定しています。『後漢書』は道真も大学で講義しているほどなので、誤用はまず考えられません。しかしこの道真一人っ子説、世間ではあまり知られていないようなのが残念。

 次に「紀長谷雄『延喜以後詩序』私注」。『本朝文粋』に収められた長谷雄の自伝的序文を、学界を中心とした時代背景を視野に入れながら読み進めています。しばしば他の人物との比較や人間関係の説明が行われているので、単なる注釈ではありません。
 解説部分を読んでから冒頭の訓読文を読むとさらに楽しめます。道真と長谷雄ってやっぱり本当の親友だったのね、と。

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