山陰亭

水田天満宮(10KB)
水田天満宮

所在地:福岡県筑後市大字水田みずた
 交通:JR鹿児島本線・羽犬塚はいぬづか駅下車

続・人脈数珠つなぎ

続・人脈数珠つなぎ

(傾向)電車の本数は本当に少ないです。
(対策)往路に2枚きっぷを買って特急に乗りましょう。

 平均すると2年に1回のペースで道真さんの「お墓まいり(=太宰府天満宮参拝)」をしているだけに、恥ずかしくて人様に教えられない程福岡を訪れていますが、訪問先が福岡市と太宰府近辺ばかりではちょっとまずいだろうと思い、県中央部を目指すことにしました。
 在来線で行くつもりが、あまりの本数のなさに、金券ショップで購入した切符を使って途中まで特急を利用することに。JR九州が発売している「2枚きっぷ」や「4枚きっぷ」を使えば比較的安価に特急に乗車できますが、往復特急を使うほど急ぐ旅でもないですから。でもさすがは特急。座り心地は快適この上なし。リクライニング式のシートを倒し、もう少し乗るなら弁当持ち込みたいんだけどねぇ、と思う存分リラックスしてから下車。改札を出て、残り区間の切符を購入し、在来線との接続が悪いのを逆手に取って駅前のミスタードーナツへ。そこで耳にした店員の日本語に面喰らう。この訛り方、明らかに博多弁じゃない……。これが筑後弁のイントネーションらしいと気付くまでしばらく時間を要しました。在来線で1時間の距離でも、全然違うんですねぇ、お国言葉って。

 改札を出て赤茶けた高架を渡り、703号線をざっと2km、なんですが、駅周辺を幾筋もの道路が通っており、どれがどれだかさっぱり分からない(泣)。駅周辺の地図も案内版もなし。仕方がないので、高架の上で斜めに延びる道に適当に当たりを付け、成り行き任せでウォーキング開始。その無責任さに追い打ちをかけるように、田園風景が延々と続きます。どこまで行ってもコンビニすら見当たらず、道を大幅に間違えたのでは? と内心焦る。博多から高い交通費払っておきながら、「見つかりませんでした」では笑い話にもなりません。
 随分歩いてから、ようやく周辺の案内図を発見し、駆け寄ってよくよく見れば、ここは思いっきり水田地区。無事に近くまでたどり着いたことを喜んで良いのか、ここまで何の手掛かりもないことに呆れた方が良いのか……。

 鎌倉時代に菅原為長ためなが(1158〜1246)が創建した神社で、太宰府天満宮の荘園があり、隠居後の住処としても用いられていたとかで、社殿は太宰府のそれと本当に良く似ています。しかし楼門は違いますね。本家の方が横方向に広くて派手です。こちらはクラシカル。良い意味で適度にひなびてます。あと、手前にある幼稚園の遊具なんでしょうが、昔なつかしツルのマークの日航機の形をしたすべり台の胴体部分に、「とびうめ号」と堂々と横書きしてあったのが、もう爆笑モノでした。分かりやすすぎます。

楼門(7KB)
楼門

 左脇には梅の枝を差し挟む道真の銅像。絵巻物ばりにバリバリに糊をきかせた衣冠束帯の座像ではなく、奈良時代の朝服をもう少しゆったりさせた平安前期の装束で立っています。写実主義的なスタイルだけに、てっきり戦前のものかと思っていたのですが、たかだか4半世紀前のものでした。意外。

正面と背面から見た道真の銅像(8KB)
正面と背面から見た道真の銅像

 とは言えこれが見たくて足を伸ばしたようなものなので、人がいないのを確認してから、前から後ろから、気が済むまでさんざん眺め尽くします。風に吹かれて裾が揺れているところなんか、もう絶妙なんですよね〜。惜しむらくは台座があまりに高過ぎること。横に並んで記念撮影したいとか、後姿を見るとついすがりつきたくなるとか、妙な野望はともかくとして、ここまで高いと、背伸びしながら見上げないといけないので、背筋と首筋がすこぶるくたびれます。

 写真を撮るだけ撮ったら、ささっとお参りをしてそのまま帰る予定でした。それがふと、「せっかくだから名刺渡しておこう」と思い、社務所に寄りました。念のため補足しますと、あまりこういうことはしません。変に関係を持ってしまうと忌憚ない意見を書きにくくなることもありますが、対応にムラがあり過ぎることを懸念する面が強いのです。せっかく盛り上がっていた気分に水を差され、一気に評価を下げてしまいますから。サイトの存在を知らないのはともかく、最も屈辱的だったのは、出した名刺を返された時。あえて名前は伏せますが、それなりに有名なところです。
 さて今回はと言いますと。意を決してインターフォンを押し、待つことしばし。無精ヒゲにTシャツ姿のスタッフ登場。「掃除してたので……」とか何とか言い訳されながら、サイトの宣伝に始まって天神社の評価基準に話が及び、沿道に案内を出していないことについて「コストが掛かるから」と正直に告白される。さらに、同じ時期に太宰府勤めをしていた人物が、よりによって筆者の知人でもあることが判明する。太宰府を挟むだけで容易に「友達の友達はみな友達」状態になってしまう事実に、思わず苦笑い。資格取得のための実務研修の場として重宝されるゆえの現象なんですが、「天神社な人々」の人間関係がこう狭いと、便利な反面、それはそれで心配だったりします。
 あとはもう、どこをどう間違えたのか、本題を逸脱して雑談で盛り上がってしまいました。初顔合わせなんですけどねぇ……。ある意味、すごい貴重な体験でした。

 成り行きで駅まで送ってもらうことになり、車を回すのを待とうとすると、不意に小銭を渡される。物事を即座に把握できない鈍さはここにも健在。自分の分と一緒に筆者の飲み物も買っておいで、という意味らしい。「最初からおごってもらうつもりだったんでしょ?」「違いますって!」……変な会話はともかく、「大祭は10月25日だから、今度はその時に来たらいいですよ」とのアドバイスを受け、スムーズに駅まで戻ったのでした。
 5分後に到着するのはよりによって特急。在来線だと待ち時間30分追加。さりとて特急料金を払う必然性がどうしても見い出せず、駅の待合室でパンフレットを物色しながら、おごられてしまったミルクティーを飲むのでした。
 結論。素直に「2枚きっぷ」を買いましょう(笑)。

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