山陰亭

原文|解説|口語訳

『菅家文草』01:039

八月十五夕待月、    八月十五の夕《ゆふべ》に月を待ち、
席上各分一字〈得疎〉  席上各《おのおの》一字を分かつ〈疎を得たり〉

一更待月事何如  一更 月を待つ 事何如《いかん 》
疑是遥旻月歩徐  疑ふらくは是《こ》れ 遥かなる旻《あきそら》に月の歩みの徐《おそ》きかと
為向東頭千万報  為《ため》に東の頭《ほとり》に向ひて千たび万《よろづ》たび報ず
白雲雖密意猶疎  白雲 密なりと雖《いへ》ども 意《こころ》は猶《なほ》 疎《おろそ》かなり

二更待月事何如  二更 月を待つ 事何如
不見金輪度碧虚  金輪の碧虚《へききよ》を度《わた》るを見ず
雨脚〓〓雲蔟蔟  雨脚〓々《そうそう》 雲蔟々《そうそう》
秋風為我可乖疎  秋風 我が為《ため》に乖《そむ》き疎《おろそ》かなるべし

三更待月事何如  三更 月を待つ 事何如
目倦心疲望裏疎  目倦《う》み心疲れ 望みの裏《うち》 疎《おろそ》かなり
酒是十巡詩百詠  酒は是れ 十たび巡り 詩は百たび詠ず
怪来不照我閑居  怪来《あやし 》くは 我が閑居を照らさざること

四更待月事何如  四更 月を待つ 事何如
鐘漏頻移意有餘  鐘漏《ぎようろう》 頻《しき》りに移り 意《こころ》 餘《あま》り有り
縦使清光纔透出  縦《たと》ひ清光纔《わづ》かに透《とほ》り出づとも
当勝徹夜甚檐疎  徹夜 甚檐《じんえん》の疎《うと》きに勝るべし

五更待月事何如  五更 月を待つ 事何如
物色人情計会疎  物色と人情と計会《けいくわい》すること疎《おろそ》かなり
不恨雲中天已暁  恨みず 雲中天已《すで》に暁になることを
応知陰雨我三餘  知るべし 陰雨は我が三餘《さんよ 》なるを

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