七月七日、憶野州安別駕 七月七日、野州安別駕を憶ふ
非無遠信屡相聞 遠信無きに非ざれば 屡 相聞えども
此夕殊思欲見君 此の夕 殊に君を見んと思欲ふ
珍重牽牛期暁漢 珍重す 牽牛 暁漢を期することを
悵然別駕隔秋雲 悵然たり 別駕の秋雲を隔つことを
定知霊匹同時拝 定めて知る 霊匹 同時に拝すことを
唯恨詩情両処分 唯恨むらくは 詩情 両処に分かるることを
依乞平安帰洛日 依りて乞ふ 平安に帰洛する日を
満庭香粉幾紛紛 庭に満つる香粉 幾ばくか紛々たらん
七月七日、上野介 安倍興行殿を想う
遠方からの便りがないわけではないので 頻繁に連絡を取っているが
今宵は とりわけ君に逢いたいと思う
ありがたいのは 牽牛が 夜明けの天の川で(織姫に)逢うこと
残念なのは 介殿が秋の雲に隔てられていること
きっと分かっている 牽牛と織姫の二星を (僕達は)時を同じくして拝んでいると
ただ恨めしいのは 詩心が(都と上野国の)二所に離れていること
そこで(天の川に)願う (君が)無事に帰京する日を
(その時)庭一面に どれほどの花がかぐわしく咲き乱れているだろうか
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