山陰亭

原文解説口語訳

『菅家文草』04:275

冬夜、対月憶友人  冬の夜、月にむかひ友人をおも

月転孤輪満百城  月は孤輪を転じ 百城はくせいに満つ
無端悩殺客中情  はし無く悩殺す 客中のこころ
山疑小雪微微積  山は疑ふ 小雪せうせつ微々びびとして積もるかと
水誤新氷漸漸生  水は誤つ 新氷の漸々せんせんとして生ずるかと
永夜猶宜閑望坐  永夜 なほ閑望してすわるによろ
寒嵐不得出遊行  寒嵐かんらん 出遊しゆついうしてあるくことを得ず
毎思玄度腸先断  玄度けんと を思ふごとに はらわた づ断ゆ
空放吟詩一両声  空しくほしいままにす 詩を吟ずる一両声

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口語訳

冬の夜、月に向かい友を想う

月はただ一つの輪をめぐらせ (光が)国中に満ち溢れる
思いがけず悩ませる 旅の最中の心を
山は(月の光を受け) わずかな雪がかすかに積もっているのかと怪しみ
川は(月に照らされて) 新たな氷が徐々に張るのかと見まちがえる
長い(冬の)夜には やはり静かに(月を)仰ぎ見て座っているのが良い
山の気は冷え冷えとして 外出して遊び歩くことはできない
(月を愛でた)許詢を思うたびに 腸が断ち切れんばかりの痛切な哀しみに襲われる
なす術なく思うまま 詩を詠じるひと声ふた声

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