冬夜、九詠(5) 老松風 冬の夜、九詠(5) 老松《らうしよう》の風
聞暁風吹老大夫 暁風《げうふう》の老大夫《らうたいふ》を吹くを聞く 冷冷恰似砕珊瑚 冷々《れいれい》として 恰《あたか》も珊瑚《さんご 》を砕くに似たり 牀頭不得閑交睫 牀頭《さうとう》に 閑《しづ》かに睫《まつげ》を交《まじ》ふることを得ず 入髄寒声可厭無 髄に入る寒声 厭《いと》ふべきや無《いな》や
冬の夜、九首(5) 松の古木に吹く風
夜明けの風が 松の古木に吹きつける音を聴く (その音は)寒々と(響き) まさに珊瑚を砕くようだ 寝床では (物思いで)心安らかにまぶたを閉じることができない 心の底に染み渡る冷え冷えとした響きは (眠りを妨げる音として)嫌うべきかどうか