秋夜〈九月十五日〉 秋の夜〈九月十五日〉
黄萎顔色白霜頭 黄萎の顔色 白霜の頭
況復千餘里外投 況復んや 千餘里外に投ぜられしをや
昔被栄花簪組縛 昔 栄花 簪組に縛られしも
今為貶謫草莱囚 今 貶謫 草莱の囚 為り
月光似鏡無明罪 月光 鏡に似たれども 罪を明らむること無く
風気如刀不破愁 風気 刀の如くなれども 愁へを破らず
随見随聞皆惨慄 見るに随ひ聞くに随ひ 皆惨慄たり
此秋独作我身秋 此の秋は独り我が身の秋と作る
秋の夜〈九月十五日(の作)〉
黄ばんだ容貌 白くなった頭
まして 千里あまり外に投げ出されたこの身の上といったら
昔は 栄進して (高官として)簪と印綬(印を帯びるひも)に縛られていたのに
今や 遠方に左遷され 荒れ野の捕虜である
月の光は鏡に似てはいるが 罪を明らかにはせず
風は 刃物のように鋭くても 憂いを突き破ることはない
(月の光を)見るにつけ(風の音を)聞くにつけ 皆痛切に感じる
今年の秋は私一人だけの秋なのだ
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