奉哭吏部王〈故一品親王〉 吏部王を哭し奉る〈故一品親王なり〉
配処蒼天最極西 配処は蒼天 最も西を極むれど
恩情未見阻雲泥 恩情は雲泥に阻まれず
去年真跡多霑潤 去年の真跡 多く霑潤なれど
今日飛聞甚懆悽 今日の飛聞 甚だ懆悽なり
元老応無朝位立 元老無かるべし 朝位に立つこと
林亭只有夜禽棲 林亭只有らん 夜禽の棲むこと
世間自此琴声断 世間 此れより琴声断え
不独人啼鬼亦啼 独り人の啼くのみにあらず 鬼も亦啼かん
式部卿の逝去を悼み申し上げる〈亡き一品(本康)親王のことである〉
(私の)左遷された地は西の空の果てだが
(親王の)厚情は遠く離れても変わらなかった
昨年の直筆(の手紙)は とても恩情のこもったものであったのに
今日の急な知らせは ひどく痛ましい
長老が 朝廷に地位を占めることはないだろう
林亭は(主を失って) ただ夜行性の鳥が生息するのだろう
今後 世の中に琴の音は絶え
人間が慟哭するだけではなく 鬼神も(琴の名手を失って)慟哭するであろう
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