流され
君が住む宿のこずゑのゆくゆくと 隠るるまでにかへりみしはや
延喜元(901)年の作。
この「君」が宇多法皇だという見方がありますが、『拾遺和歌集』のもととなった『
漢詩と和歌の性格の違いなんでしょうが、道真の漢詩には恋愛関係の話がまず出てきません。妻を指すにも「息子の母親」と迂回した表現をとることがあるほどで、漢詩は異性への愛を語るものではなかったのです。
そう考えると、この歌は道真が妻に贈ったという珍しいものなのですが、「見えなくなるまであなたの家を眺めていました」(これは「あなたのことをずっと考えていました」という意味でもあります)と名残惜しさを告白されると、女性は感極まるものです。
流されて後、言い寄こした歌 贈太政大臣
あなたが住む家の木の梢が遠ざかるにつれ 隠れて見えなくなるまで振り返って見たことよ