山陰亭

原文解説口語訳

『拾遺和歌集』巻第十六・雑春・1006

流されはべりける時、家の梅の花を見侍て 贈太政大臣

東風こち吹かばにほひをこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな

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解説

 ほとんどの方がご存じだと思います。延喜元(901)年自宅での作。
 京都を出たのが2月1日。太陽暦(グレゴリオ暦)に直せば2月27日。
 ここで梅が擬人化されているのは興味深いのですが、人事にかかわりなく自然は移り変わり行くもので、同じ光景が違って見えるのは人間の心境によるものなんですよね。
 しかも、「梅の香りは恋しい人を思い出させるもので、妻への思いを込めた」という解釈(中島信太郎『菅原道真』)もあります。彼には自身の運命を歎くだけでなく、家族を思いやる余裕がありました。それが自責の念を一層あおったのですが。

 ところで、承久本『北野天神縁起絵巻』の紅梅殿別離のシーン、つい道真と紅梅に関心が向くのですが、目を左に転じると対屋で嘆き悲しむ女性達の姿が見えます。そのうち几帳の陰に伏しているのが北の方とされ、夫婦を左右に配置して永遠の別れを暗示しているとか。なかなかうまい表現だと思いませんか。

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口語訳

流された時、家の梅の花を見て 贈太政大臣

東から春風が吹く時期になれば、香りを(風に乗せて、西の果て九州の地まで)送り寄こしなさい、梅の花よ
主人がいないからと言って、春を忘れるなよ

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