山陰亭

木村泰夫ひろお 『天神さん人形』日貿出版社 2000

 本は内容を確認しないと買う気がしないので、まず図書館で借りましたが、数日後には発注しました。著者の所蔵する膨大な天神人形コレクションを、詳しい解説とともにまとめた本です。天神信仰に関する簡単な解説もついていますが、やはり人形が主体になっています。

 一般的な書評なら「天神人形を体系的に紹介した労作」「日本の土俗的な文化を再認識させる一冊」とでも書くのでしょう。確かにその通りなんですけど、こんな単純なキャッチコピーで片付けてしまうのはあまりにももったいない。郷土玩具は「どこで」作られたかが問題にされがちですが、この本は「誰が」作ったかについて詳しく書いているのです。産地より作者に焦点を当てるという発想、目からウロコでした。巻末には制作者の連絡先まで掲載していますので、気に入ったものがあれば入手も可能です。
 とはいえ、「馬乗鎮台」(30ページ)など、現代っ子には理解不能な単語が出てきて困ることもあり、郷土玩具全般の解説書が横にないと読みづらいと思います。

 人形の写真は全てプロのカメラマンがカラーで撮影したもの。読むというより眺めるための本ですので、これは正解です。で、実際に眺めてみると、人形のバリエーション、立ったり座ったり牛に跨がったりはともかく、「天神持ち」(女性が天神人形を掲げ持つ)や押絵まで来ると、多様性に驚くばかりです。とりあえずは、ぱらぱらめくって楽しめば良いのではないでしょうか。

 カラー写真に刺激されて人形を自作しようかとまで思ったのですが、不器用なのでかろうじて思いとどまっています。でも、写真見るとやっぱり作りたくなりますねぇ。変に創作意欲をかき立てられる一冊です。

▼ 末尾へ▲ 先頭へ


トップこのサイトについて3分で読む菅原道真みちざねっと・きっずFAQ
苦しい時の神頼み普通の人のための読書案内漢詩和歌快説講座作品一覧「研究文献目録」補遺

(C)1996-2024 Makiko TANIGUCHI. All rights reserved.
http://michiza.net/jrb/jrbhkmr.shtml