本は内容を確認しないと買う気がしないので、まず図書館で借りましたが、数日後には発注しました。著者の所蔵する膨大な天神人形コレクションを、詳しい解説とともにまとめた本です。天神信仰に関する簡単な解説もついていますが、やはり人形が主体になっています。
一般的な書評なら「天神人形を体系的に紹介した労作」「日本の土俗的な文化を再認識させる一冊」とでも書くのでしょう。確かにその通りなんですけど、こんな単純なキャッチコピーで片付けてしまうのはあまりにももったいない。郷土玩具は「どこで」作られたかが問題にされがちですが、この本は「誰が」作ったかについて詳しく書いているのです。産地より作者に焦点を当てるという発想、目からウロコでした。巻末には制作者の連絡先まで掲載していますので、気に入ったものがあれば入手も可能です。
とはいえ、「馬乗鎮台」(30ページ)など、現代っ子には理解不能な単語が出てきて困ることもあり、郷土玩具全般の解説書が横にないと読みづらいと思います。
人形の写真は全てプロのカメラマンがカラーで撮影したもの。読むというより眺めるための本ですので、これは正解です。で、実際に眺めてみると、人形のバリエーション、立ったり座ったり牛に跨がったりはともかく、「天神持ち」(女性が天神人形を掲げ持つ)や押絵まで来ると、多様性に驚くばかりです。とりあえずは、ぱらぱらめくって楽しめば良いのではないでしょうか。
カラー写真に刺激されて人形を自作しようかとまで思ったのですが、不器用なのでかろうじて思いとどまっています。でも、写真見るとやっぱり作りたくなりますねぇ。変に創作意欲をかき立てられる一冊です。