最初に断っておきますが、きちんとした伝記を読みたいという方には以下の3冊をお勧めします。これらの記述は本によっては参考どころか無断引用までされていますから、執筆者の技量を判断する格好の材料にもなります。特に川口久雄氏の文体は独特なので、簡単に判別できますよ。
さて本題。この本は小説形式の伝記です。
「詩人」と「政治家」の葛藤を中心に据えて話を進めているのが特徴で、漢詩を現代語訳したり地の文に紛れこませたりと、依頼されて書いたわりには苦悩する人間像をうまく造形しているあたり、詩人の本領発揮というところでしょう。かなりフィクションを含んでいるので、記述内容をそのまま事実として受け取られるのはいささか問題があるのですが、作り物と割り切ってしまえば手軽な分量です。完璧を期すなら上の本でも読んでいただくことにして、道真の半生をどっぷり追体験してください。