1998年に「建国1300年」を迎えた古代国家
渤海という国は、地理的には中国東北部からロシア極東部にかけての地域、つまり裏日本と向かい合う位置にあり、地図で見るとまさに「環日本海文化圏」に重なります。国王は百済王朝の末裔。この国の歴史や日本との交流について書いた本です。
古代の対外交渉と言えば遣随使と遣唐使が有名ですが、新羅=朝鮮半島はもとより、渤海とも交渉がありました。特に渤海使節団はしばしば来日しており、その回数は上田氏によれば34回にもなります(遣唐使は計画のみの場合も含めて18回)。
渤海と日本はずっと友好関係にあったため、唐へのバイパスルートの面もあり、例えば、唐に留学するには遣唐使に参加する以外にも、唐の商船や帰国する使節団の船に乗り込んだ場合も意外と多いのです。
もちろん道真も詩宴で大活躍していますが、それを別にしても遭難事故・国際結婚・国家滅亡と、史料を駆使して当事者の視点からリアルに描いていますから、下手な小説よりよほど面白いですよ。薄い本ですので、手軽に読めます。