どう見ても一般向けに書かれた本なのに内容充実のお買い得。
柔らかい文章を書くのに硬い本を使うのはよくある方法ですが、この本はその良い例で、簡潔で分かりやすいのに記述はそこそこ(27ページの「(延暦)七年八月」は「九月」だとか、時々間違いがあるのです)信頼できるというすごい本です。しかも各項目の題名だけでも楽しめます。
平安京の人々をめぐるエピソードを紹介した本は他にもありますが、長岡京とか平安初期といった、あまり話題にされない時代の話が多く、平安時代と聞いて国風文化、十二単といったイメージが浮かぶ人は目を通しておいてください。いかに常識に嘘が多いか良く分かりますよ。「国風」という言葉そのものが「田舎」を指す言葉ですしね。
巻末には「平安京人物誌」として本文中に登場した人物の説明がついています。これを読まなくても充分理解できるのですが、ちょっとしたリファレンス代わりに使えるので、他の本を読む時に便利だと思います。