月夜見梅花 月夜に梅花を見る
〈于時年十一。 〈時に年十一。
厳君、令田進士試之。
予始言詩。故載篇首。〉 予始めて詩を言ふ。故に篇首に載す。〉
月燿如晴雪 月の
梅花似照星 梅花は照れる星に似たり
可憐金鏡転 憐ぶべし 金鏡
庭上玉房馨 庭上に玉房の
斉衡2(855)年の作。記念すべき処女作です。
11歳というのは、父
この作品はテーマも内容も、将来宮中の宴で典拠をちりばめて華麗さを競う漢詩文を作ることを意識して選ばれているのですが、さらに「当代の詩匠」(『本朝文粋』08:201紀長谷雄「『延喜以降の詩』序」)
忠臣とは彼が死ぬまで深いつき合いがありましたし(05:347「田詩伯を哭す」を参照)、見立ては道真自身が死ぬ直前まで手放さなかったほどです(『菅家後集』514「謫居の春雪」を参照)。
もっとも、鑑賞するだけならこんな蘊蓄は置いといて、どこからか漂ってくる馥郁とした香りだけを想像してください。月夜に照らされて光る白梅という視覚イメージよりも味わい深いと思います。そこに月の光がおだやかに降るわけ。
月の夜に梅の花を見る
〈当時十一歳。
父が、文章生島田忠臣に命じて私に詩を作らせた。
私は初めて詩を詠んだ。そこで冒頭に載せておく。〉
月の光は晴れた日の雪のようで
梅の花は輝く星に似ている
なんとすばらしいことだろう 黄金色の月が移動するにつれ
庭では白い梅の花が香ってくる