種菊 菊を
青膚小葉白牙根
茅屋前頭近逼軒
将布貿来孀婦宅 布を
与書要得老僧園 書を与へて
未曾種処思元亮
為是花時供世尊
不計悲愁何日死
堆沙作〓荻編垣
延喜2年春、やはり道真は庭に菊を植えていました(『菅家文草』04:303「諸の小郎と同じく、客中の九日、菊に対ひて懐ひを書す 」)。未亡人とは布との物々交換、僧侶には手紙をしたため、従者を通じて得た苗を、部屋から見える場所を選んで植えました。「釈迦世尊に供えるためであって菊を愛した陶潜(陶淵明)にちなんでのことではない」と、言い訳をしてはみるものの、湿気がちな土壌で根腐れを起こさないよう、砂で土手を作り、自分の手で植え、踏まれないように垣根を作る、その行動は念に入ったものでした。
秋になって花開くまで、自分の命が持つか定かではありませんでしたが、世話の甲斐あってこの年は幸い白さを愛でることができました。それが最後の秋ではありましたが。
菊を植える
表面が青い小さな葉 白い牙のような根
布と交換したのは 未亡人の家(の菊)
手紙を贈って入手できたのは 年
今まで(菊を)植えたのは
花が咲いた時 御仏にお供えするためだ
悲しみや憂いで いつ死ぬか 分からないが
砂を積み上げて土手を作り