山陰亭

 太宰府天満宮本殿の欄間彫刻のうち、右側(飛梅の奥)に、魚にまたがる仙人風の人物が描かれています。彼こそが「イルカに乗った少年」、もとい「鯉に乗った天神さまだ〜!」と、始まったのが10月の「特別受験合格祈願大祭」キャンペーン。

太宰府天満宮本殿の欄間彫刻(12KB)
太宰府天満宮本殿の欄間彫刻

 ……しかし、本当はこの人、道真さんじゃなくって「琴高きんこう仙人」という赤の他人なのです。彼は中国周時代の仙人で、弟子に「龍の子供を捕まえてくる」と言って川に姿を消し、約束の日に鯉に乗って水中から現れたという逸話を持ちます。日本人にはよく知られた題材だったようで、尾形光琳・酒井抱一なども描いており、日光東照宮の陽明門にも彫刻があります。

高山祭の琴高山(12KB)
高山祭の琴高台

 飛騨高山の高山祭に、「琴高台きんこうだい」という彼が登場する山車がありますが、その見送りにも鯉にまたがった姿で描かれています。

 もっとも、ある意味面白いミスリード(誤読)だと思うので、そのまま話を続けましょう。
 『史記』の作者である司馬遷しばせんの出身地、竜門りゅうもんにある滝を登り切った魚は竜になるという言い伝えがあります。日本で言うところの「登竜門」ですね。ポケモンでコイキングがギャラドスに進化するのは由緒正しいのですよ(笑)。
 エリート官僚を輩出したことから、道真の私塾(廊下)も「竜門」と称されましたが(「書斎記」)、そこまで念頭に置いているのかは謎。

 さて10月になると、特別仕様の合格祈願セットが登場します。もちろん一式欲しかったんですけど、すでに試験が終わって発表待ちの身だったので、「祈祷するのは変だろう」のひとことで即却下。くすん。
 絵馬のデザインも、表面は欄間彫刻から描き起こしたもの、裏面は竜の絵、背景は水色というスペシャル版。鉢巻も水色。この鉢巻、通常版(白色)は長さが足りなくてあまり使い勝手が良くないんですけど、そのあたり解消されていればいいんですけどね〜。
 おみくじも「鯉に乗った天神さま」が描かれた水色のものに変わります。

 本殿手前にある楼門には、竜と鯉を従えた道真さんをあしらったオリジナルのねぶたが乗せられます。
 わざわざ青森から制作者を呼んだのかと思いきや、地元に越してきた人にねぶた師がいたので、声を掛けたのだとか。

楼門に乗る「飛龍天神ねぶた」(17KB)
楼門に乗る「飛龍天神ねぶた」

 そしてこれが日没後はライトアップされます。観光客はとっくに余所に流れている頃なので、ある意味貴重な光景。

ライトアップされた楼門(12KB)
ライトアップされた楼門

 このイベント、なぜ10月なのかと言いますと、文章博士もんじょうはかせに任命されたのが10月だから。難関突破なら方略試ほうりゃくし(博士論文みたいなもの)の方が適切ですが、合格発表が5月なのでちょっと使いにくかった模様です。もっとも、国家試験は案外夏に多いので、そういう時期の方がありがたかったりするのですが……。

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