所在地:埼玉県川越市郭町
交通:西武鉄道新宿線・本川越駅下車
東武鉄道東上線・川越市駅下車
JR川越線・川越駅下車
(傾向)郷土愛はあっても堀がない城下町とはこれいかに。
(対策)本丸・博物館界隈へはバス。普通の観光なら一番街から菓子屋横町へ。
埼玉県民と知り合ってまず面喰らったのが、地元へのネガティブな態度。東京都の上に位置する「彩の国」がそんなにダサイとは思えないんですけど……。ですので「郷土愛がない」と歌で喝破したはなわは傑作でした。あと大宮市が「さいたま市」になったのを、浅田次郎が新聞小説『椿山課長の七日間』の中でケチョンケチョンにけなしていたのも面白かったですねぇ〜。コロコロと鳴るロココ調の電話が……、って原作読まないと分からないですね、この先は。
その中で「あそこだけは別」と、住民に郷土愛が存在すると指摘された唯一の地が川越市。ここは小江戸の一つとして知られていますが、中心部から少し離れたところに童謡「通りゃんせ」発祥の地とされる三芳野神社があります。
通りゃんせ、通りゃんせ。
ここはどこの細道じゃ? 天神さまの細道じゃ。
ちょっと通して下しゃんせ。御用のない者通しゃせぬ。
この子の七つのお祝いに、お札を納めに参ります。
行きは良い良い、帰りは怖い。怖いながらも通りゃんせ、通りゃんせ。
「るるぶ」の埼玉県版に川越小特集のページがあったのは良かったのですが、地図がデザイン重視の大雑把なシロモノ。使い勝手はあまり期待できないんですが、観光地だしまあ大丈夫でしょ、とタカをくくっていたら、駅前から小江戸エリアに抜けるまでではなく、駅に直結したショッピングモールを脱出するのに一苦労。地図に文句をつける以前の問題だと思いますよ、それ。
で、駅前に出て周囲を見回していたら、観光ボランティアのおじさんを発見。早速格段に正確な地図を入手し、土産物屋を覗きつつ、一番街(観光エリア)までしばらく歩くことに。1日乗車券で観光用のバスに乗ることもできますが、運行主体が2社あって違いが良く分からなかったもので。
……むむ、平日なのに、イベントもないのに、どうしてこんなに人が多いんだ?
右を見ても左を見ても中高年の小集団。しかもどこをどう見ても観光客にしか見えない。おかげで名所「時の鐘」の解説をタダで聞けましたけど、そんなに有名な所なのかな〜と傍目には不思議で仕方がなかったりします。いや確かに街並みもクラシカルだし後述するように食べ物も旨いんですけど、「よし、今度は川越に行くぞ!」と一念発起するものなんでしょうか? そういうことなんでしょうねぇ、きっと。
さて本題の川越城。駅からはとてもとても遠いので、バス利用をお勧めします。現状はどこまでが堀の内だったかもすっかり分からなくなっていますが、現存する本丸御殿が神社の近くで公開されています。二条城(京都市中京区、世界遺産)の豪華絢爛な内装を見た後では何を見てもしょぼく見えてしまうんですが、見学しながら、本当にお城なんだよね? と確認してしまいました。あー、とりあえず見学という目的を満たすお手軽な価格設定で良かった。
道路を挟んだ向かい側、むき出しの地面に放り出したような体裁で建っているのが三芳野神社。境内が川越城の敷地に取り込まれてしまったため、民間人が参拝と称して城内に出入する格好となり、往時は情報漏洩を危惧する武士相手に「用件は?」「子供のお礼参りだ」とやり合わなければならなかったという話ですが、道路を渡った時点で、「地面が草むしている城の一角、石垣の脇に、小さな祠が残り……」、という城郭に対するイメージ(=妄想)は完全崩壊状態。かと言って玉垣をめぐらせている訳でもありません。
正面の参道と梅林だけでなく、もっと脇も整備しましょうよと嘆くことしきり。復元図を見ると、確かに城の中心部に近かったことが確認できますが、今の風景でそれを想像しろと言うのは無理な話です。
近くに「わらべ唄発祥の所」という大きな石碑が立っていました。しかし興味をそそられたのはむしろその隣の「川越城の七不思議」。単語だけ見ても分からないのでとりあえず説明版を読むと、毎年雁が当地に渡ってくると神社の裏手にある杉の木の回りを3度回るから「
天神絡みの話では「天神
「竜神がミチザネの夢枕に……」、ちゃうちゃう、それは竜神ではなくて
何のことだか分からない健全な方々のために補足しますと、阿衡の紛議で自分を弁護してくれたことに感謝して、亡くなった後に広相が道真の枕元に金の板を3枚置いて去ったので、道真は「
(傾向)別に喰ってばかりではないけれど、高楊枝では判断できない。
(対策)基本的にこの街は食べ物が美味しいので大丈夫。
「栗より(九里+四里)うまい十三里」だとかで、川越の名産品はお芋さん。芋尽くしまで行くと胃にも懐にもキツいかなと、お昼は軽く「
続いて菓子屋横町へ直行。あまり駄菓子は食べないので、黒砂糖でコーティングした巨大な麩菓子「大黒棒」はパス。芋けんぴや紫芋チップスでは芸がないので、芋羊羹でもと思いきや、賞味期限が短いので土産には使えず。仕方ないので老舗和菓子屋「亀屋」で適当にオリジナル商品を見繕い、ついでに自家用として芋シュークリームを調達。形はさつま芋でしたが、味はそんなに芋イモしていませんでした。
もう一つ菓子屋横町で気になったのが、紫芋のソフトクリーム。香料と着色料でそれっぽく仕上げた御当地ソフトが多い中、「紫芋100%」の看板にそそられて試食。ソフトらしからぬモソモソした食感にほんのりとした甘さ……、そう、コレ! まさに芋! なめるのではなくまさに「食べてる」感じ。これで300円切ってるのは詐欺だと思う。原価率高そう。持ち帰れないのが玉にキズですが、これは必食です。
あとざる豆腐と醤油も美味しそうでしたね。豆腐屋の奥で豆腐丼食べて、おこわ買って帰るというのもアリかもしれません。それから、江戸文字の木札をつけた根付をオーダーできる「
観光地って食事にはあまり期待できないものですが、川越は大丈夫です。願わくばそのような街の増しゆくことを。