所在地:大阪市北区天神橋
交通:大阪市営地下鉄・
JR東西線・大阪天満宮駅下車
(傾向)他の神社が天神社に転化するのはよくあること。
(対策)境内の細部にどれだけ気がつくか勝負。
大阪の人が言うところの「
地下鉄とJRは名前こそ異なるものの、場所は同じ。JRのホームには梅があしらわれています。3番出口を出ると、今度は本物の梅が街路樹として植えられています。すぐ左手が天神橋筋商店街。商店街を南下し、少し歩くと左手にコインパーキングがありますので、再び左折。天満宮の南側に到着します。中央の表門から入る場合は門の真下で一度止まって上を見ましょう。干支の方位板があります。特に西の方位に注目。酉=鶏ではなく鳳凰なんです。大阪の西は太宰府ですからね。
境内に大将軍社がありますが、これが地主神です。飛鳥時代に長柄豊崎宮が造営された際に祭られたと言いますから、道真の参拝をきっかけに天満宮へ変わる以前、すでに3世紀の歴史があったわけです。
そして吉備社。奈良時代、学者から右大臣になった
(傾向)いくら建前を述べても第一印象は影響する。
(対策)本当はもっといい男でありますように、っと。
本殿の左、休憩所の近くに、コンクリートの建物への入口があります。ここでは道真の生涯が博多人形で展示されており、日中なら自由に見学できます。太宰府天満宮から譲渡されたものとかで、最後のシーンは「天神祭」の題がついていても明らかに太宰府です。
(傾向)大阪じめを知らないと場がしらける。
(対策)見学するなら予習とプランニング。
7月24日〜25日の天神祭。すっかり見世物と化していますが、最初に本来の意味をきちんと押さえておきましょう。
川辺から鉾を流すと、やがてどこかに漂着します。そこを旅所として御神体を運び、氏地を回って宮に戻ります。普通は陸を巡行するものですが、水上でもやってしまうのがこの祭の特色でしょう。
さすがに毎年旅所が変わるのは不便だったのか、江戸前期に旅所が固定されるようになりました。そこで旅所近辺の住民が船を仕立てて迎えたのが、
ところが戦後になって大阪が地盤沈下するにつれ、橋まで沈下し、その下を船で通ることができなくなってしまいました。中之島図書館の近くにある水晶橋は特に低く、
(注:淀川の支流が大川で、この川がさらに中之島を挟んで北の堂島川と南の
25日は16時から
奉安船をサポートする格好で上流を目指します。筆頭は陸渡御で大活躍した
落語船と文楽船。供奉船に同行します。非常にノリが良いので、アピールすればちゃんと反応してくれます。歌舞伎船は2000年を最後に撤退しました。文楽船も同時に撤退し、
神様御一行とは反対のルートを取り、
最近は大学で船を出すのが流行しており、現在は大阪大学・関西大学・追手門大学・京都産業大学が参加しています。
運行の都合上、船の総数は100隻程度に抑制されていますので、どこかが撤退すれば、順番待ちの船が入るでしょう。
「天満宮の氏子ではないし、有名どころとは縁がないし……」と嘆くなかれ。一般人でも乗るチャンスはあります。
筆者も「一般向けの枠に申し込んだ」「関係者筋で話が出た時に頼んだ」の2パターンで何度か乗っています。最近はネットで予約を受け付けるところも出てきました。必要なのは情報収集力と身銭を切る度胸かな。一般枠は2.5〜3.5万円が相場なので、この金額を「一生に一度」と割り切れるかが鍵でしょう。
市民船は7月上旬に参加者を公募しますが、当選者が堪能できるのは、あくまで水上バスを使った無料見学会です。屋根つきの完全密室のため、水上を走る涼しさを肌で感じたり、大阪締めを交わす楽しみは味わえません。
順番を守らず自由に移動できます。人力で漕ぐどんどこ船は、昼間は堂島川・道頓堀川あたりで祭の開催を触れ回っていました。大人チームとジュニアチームが存在します。
人形講船は皆で幟を振りながら、川を高速で上り下りします。
列外船ではありませんが大阪府警が警備用に出している船もモーターボートです。救命胴衣を着けた犬が同乗しているのがキュート。
能船・神楽船など。川の中央に固定されているので、見物するのはかなり難しいと思います。
篝船も固定されていますが、照明代わりにかがり火を燃やし続けるための船なので、間違いなく灼熱地獄です。近付いただけで熱気が伝わってきます。
船の役割を押さえたところで、陸上から見物するポイントを考えてみます。
船渡御が始まる前にJR桜ノ宮駅で下車し、
神様の上に人が立つなんて畏れ多いという理由から、橋の中央付近には目印としてベニヤ板が立てられ、渡御の際は通行止めになります。つまりこの下を船が通りますから、場所選びの目印に。
もしくは右岸
岸や橋の上にいると、船から「大阪じめよろしくお願いしまーす」と声がかかります。芸人さんのお誘いには素直に応じましょう。船と陸と、息を合わせて「打ちまーしょ(パン、パン)、もひとつセー(パン、パン)、
船同士だと、乗っている芸人同士が顔見知りかどうかで声がかかるか決まる気がしますが、陸だとそういう心配はいりません。大阪じめを知らないことの方がよっぽど不安です。模範演技の動画、どこかのサイトに掲載してたら助かるんですが。
UHF局であるテレビ大阪が、局の屋上と船上を使って2時間の生中継を行います。ただ年によって完成度の差が激しいので、過度の期待はしないで下さい。ひどい年はお笑い芸人が延々と騒いでいるだけだったこともありました。
とりわけ印象に残るのは、台風接近で打ち上げ花火が中止になり、屋上特設スタジオの雰囲気が異様に沈んでいた年(1997年)のことでしょうか。盛り上がらないテレビ番組ほど悲惨なものはないのです。
当日の予報が雨だと、「花火はどうなるの?」という声がほうぼうから上がりますが、風速10m未満なら打ち上げます。最近中止になったのは、前述の台風接近の年だけです。船渡御はオイルショック時に中断を余儀なくされたものの、以降は毎年実施。経済効果が大きいので、よほどの異常事態が起きない限り、中止できないんでしょう。
小雨がぱらつくのはいつものことなので、そんなに心配することはありません。カッパがあれば言うことなしです。
(傾向)これがたいした問題にならなかったのは何故?
(対策)地図ですよ、地図。
JR東西線の開通で問題は解決しましたが、それまではどの路線を使えばよいか、非常に分かりにくいものでした。まぎらわしい駅名を列挙しますと、
これらの駅からですと(予想と期待に反して)結構歩かされます。天神橋筋二丁目の天満宮まで、「天満(=天神橋筋四丁目)からはよそ見すればどうにか」、「天満橋(中央区=川の向こう側)からは気合い次第」、「天六からはキツい(丸々2駅分)」。つまり最寄り駅はこのどれでもなくて、地下鉄なら天満橋の次、南森町駅です。
(傾向)とにかく、長い。
(対策)間違っても全区間歩こうと思わないこと。
大阪では南北の通りを「
全長約2.6kmと日本一長いこの商店街、混み具合も雰囲気もほどほどでいいです。値段は安いし、行列のできる店はあるし、食い倒れの縮図のようなところがあり、呼び込みがないので散策に向いています。空きテナントをどうするか、いかに客を呼び込んで活性化するか、などいたるところの商店街が抱える問題点もよく分かります。最近はチェーン店が増えているように感じるのが気掛かりです。
ただアーケードの飾り付けがすごくて、垂れ幕・巨大堤灯・鳥居・人形と続き、頭上が心配になったことも度々。
せっかくですから、思いつくままいくつか店を挙げてみましょう。ただし空腹時に読むと辛いですよ。
天神橋筋三丁目。和菓子の薫々堂。大福は季節によって具が変わります。
天神橋筋二丁目。中村屋のコロッケ。1個60円なのでおやつに最適ですが、夕方は行列覚悟で。天満宮の東には絵馬型の「合格パン」を作っているマルイチ菓舗があります。その向かいは「アロエにぎり」や「梅バッテラ」なんて珍メニューもありますが、蛸・鱧・梅肉などを入れた巻き寿司「天神巻」で有名な福すし。宝くじ片手に食べたら当たった(テレビ大阪の番組で本当に10万円当ててました)とか、受験がうまくいったとか、評判のいい縁起物です。
そして天神橋筋五丁目。道が複雑な割に有名な店が多いのでガイドブックは欠かせません。ミヤコ屋というスーパーの角を東に折れると寿司屋が3軒も揃っていますが、どの店も値段が回転寿司並みに安く、お客さんが外で椅子に腰掛けて順番待ちしてました。そこから2つ目の角を北に進むと韓国家庭料理の玉一。曲がらずに直進すれば焼肉の珍三カルビ。反対にミヤコ屋から西に行けば、蛸焼きのうまい屋、ネパール料理のカンティプール、琉球料理の梯梧屋があり、すっかり国籍不問の感を呈しています。天満駅前にはマクドナルドもありますしね(笑)。
……まあこれくらいだろうと思っていたのですが、調べてみるとまだまだありました。飲食店が、じゃないですよ。味に対する評価の高い店が、です。天五の萬作(つくねで有名な焼き鳥屋)、天満卸売市場(天五の東)にあるゴメンネJIRO(洋食)、天四の天満菊水(お好み焼き)、天三の四川辣麺(坦々麺)・光華(香港・広東・ベトナム料理)、天二の亀の池浪速(鰻)・グリル樹林亭(洋食)。ここまでくると、駅と天満宮の往復ばかりしてないで、ちゃんと食事して帰ろうと思いますね。「梅田からでも足を延ばすべき」と言われるだけのことはあります。
ただしメーンストリートを外れた途端に迷子になるエリアなので、店鋪の場所はガイドブックできちんと確認しておきましょう。