寒早、十首 寒は早し、十首
〈同用「人」「身」「貧」「頻」四字〉(1) 〈
何人寒気早
寒早走還人 寒は早し
案戸無新口
尋名占旧身 名を尋ねて 旧身を占ふ
地毛郷土瘠
天骨去来貧
不以慈悲繁 慈悲を
浮逃定可頻
仁和2(886)年の初冬、讃岐の地で作った五言律詩の連作「寒は早し」の第1首です。全10首のテーマは以下の通り。
大別して、税負担に堪えかねて故郷を捨てた人・家族のいない人・末端の公務員・農業以外で生計を立てる民間人に分かれます。いくら働いても生活は楽にならず、困窮にあえぐ人々の姿を描いており、筑前守だった万葉歌人
この10首は、全て「何れの人にか 寒気早き/寒は早し ○○の人」という疑問文と解答の形で始まり、「人の身の貧しきこと
冬の寒さが早く訪れる、十首
〈皆「人」「身」「貧」「頻」の四字を(韻字として)用いる〉(1)
誰に 冬の寒さは早く訪れるのだろう
冬の寒さは早く訪れる (税の負担を逃れて他国へ)逃げ出しながら帰ってきた人に
(戸籍で)家を調べても 近年生まれた人(の記載)はなく
名前を尋問して 元の出身地を推測する
草の生える土地は 地元とは言えやせており
生まれつき(貧しいのに) 往来すると(さらに)貧しくなる
(もし役人が)慈悲でつなぎ止めなければ
(再び)逃げ出すこと きっと頻繁なはずだ