『北野天神縁起絵巻』を見るのに、便利で安価な本を挙げてみました。税込560円也。
国宝指定されているのは承久本(北野天満宮所蔵)ですが、天神縁起全般の紹介や渡唐天神像の解説まであり、いたれりつくせりです。あくまでもさわりとは言え、総頁数を考えればむしろお見事。かの有名な「
絵巻全体を見るなら『続日本の絵巻15 北野天神縁起』(中央公論新社 1991)。フルカラーなのに4000円でお釣が来ます。ちゃんと弘安本も収録されてますし、解説を読めば、中途半端に終わっている承久本が、構想レベルではどんな構造を持っていたのか分かるので便利です。
ただ、巻末の詞書釈文と絵を合わせて読むと気がつくのですが、図版に添えられた解説文が必ずしも正しいわけではありません。巻二の「我文草二十巻」は、「十二巻」の誤写ですが、解説文でも訂正されていません。また巻五の天拝山も、釈迦が「道真の赤心を賛嘆した」のではなく、「釈迦が仏になったように菅丞相は天満大自在天神となった」ということなんです。
補足。知人に「恩賜御衣って何?」と源氏物語片手に聞かれたので書いておきますが、これは901年9月10日、道真が大宰府で作った「九月十日」という詩の一節。ちょうど1年前は宮中で詩を詠んで帝から衣を頂いたのに……というくだりです。学習用歴史漫画のお約束だし、源氏への引用という形で高校の教科書にも載ってるし、もちろんご存じですよ、ね?