所在地:東京都文京区湯島
交通:東京メトロ千代田線・湯島駅下車
(傾向)千羽鶴などオプションが散見。
(対策)仲間で同じ所に掛けたら探しやすいかも。
駅の出口から東京大学方面へ、急激な上り坂を時計回りにぐるっとひと回り。途中でバイパス石段がありますので、ここから直接境内裏手へ入ります。最後まで回り切れば正面から入れますけど、かなりきつい行程ですからね。
古墳時代のまっただ中、雄略天皇の時代から
最近社殿を新築し、総桧造の紋様入りという華やかな建物になりました。「湯島神社」から「湯島天満宮」に改称したのもその頃だと思いますが、「湯島天神」の通称の方が良く知られているせいか、社務所に電話をすると「ハイ、湯島天神です」と返ってきます。
ここは絵馬が鈴なり。
あまりにも枚数が多すぎて、どうやって絵馬を掛けているのかわかりません。北野も太宰府も顔負けのボリューム。
東大をはじめ周辺に学校が多いのは確かですが、23区内だけでも亀戸天神社や平河天満宮などがありますから、東京に天神社が少ないわけでもないと思うんです。それでも受験ネタのテレビドラマを作ると、ヒット祈願 兼 話題作りに取材クルーが入るのは必ずここだったりするんですが。
で、その絵馬なんですけど、ひとことで言えば、「めっちゃ可愛い」。
黒い束帯姿で梅の枝を握り、どっかと腰を下ろした白牛の上にまたがる牛乗天神の構図です。どこをどう見ても道真はいい年したオジさんのはずですけど、ほのぼのとした描線がいい味出してるのかな〜、と写真を眺めていると、ある事実を発見。
「あ、
太刀を
社殿を新築した際に宝物館も建てられました。拝観料は一般500円、大学生・高校生300円、中学生・小学生200円。神輿・界隈を描いた浮世絵・天神や梅を描いた近代日本画・富くじの箱・白隠の巨大な文字絵版渡唐天神などを展示しています。
(傾向)上演機会が少ないので、知識としては役に立たないか。
(対策)聞き流す位がちょうど良い。
宝物館に、江戸時代に出目長吉という人物が製作・奉納した能楽の面があります。眉をつり上げ、金色の目を見開き、口をきっと開けた「天神」の面。これだけ見ても良く分かりませんので、この面を使う能として「
都に住む女性が、息子の父親を訪ねて大宰府にやって来た。彼女は宿の主人である左近尉に大宰府の神主宛の手紙を託す。留守中の夫に代わって手紙を受け取った神主の妻は、返事を代筆する。その内容は、息子との対面を拒絶し、帰京を促すものであった。心変わりを悲しんだ女は、剃髪を口実に子供を宿に残し、藍染川に飛び込んでしまう。それを知った左近尉は少年を連れて現場に駆け付けた。少年は母の後を追って川に飛び込もうとするが、左近尉に押しとどめられ、形見として母親の手紙を渡される。
旅先から戻って来た神主は、藍染川に大勢の人間が集まって網を引いているのを見とがめた。左近尉が「漁ではなく、恋人を訪ねて来た都の女性が、相手に対面を拒否されて身を投げたのだ」と神主に説明すると、神主は彼女の息子という少年が持つ手紙に興味を示す。それは遺書であった。一読して末尾に自分の名前を見つけた神主は、実の父親として少年と会う。母親の遺骸とも向き合い、「息子に後を継がせ、菩提を弔うから恨まないでくれ」と呼び掛けるが、彼女は崩れ落ちた美貌を無惨にさらすばかりであった。
そこで神主は祝詞を神前で読み、彼女を生き返らせようとする。すると天神が示現し、彼女を蘇生させた。
室町時代物語「あゐそめ川」を舞台化した作品のようなのですが、こちらにはさらに天神縁起の語りと後日譚が収録されています。天神縁起の部分は絵巻の詞書を引き写した感じの記述で、どの類か検討するのも一興でしょう。そして後日譚によれば、神主は妻を追い出し、少年を跡取りに据えたとのこと。唐突に天神が登場する謡曲の終わり方よりは幾分分かりやすいのですが、余り気持ちのいい幕切れではありません。
この謡曲は、後に「藍染川絵巻」にも描かれますが、天神の示現も蘇生もなく、神主が女性を供養する話で結ばれています。三者の結末が全て異なるとは珍しいですね。
藍染川は現在でも光明禅寺(福岡県太宰府市)の前を流れていますが、溝と間違えそうなほどか細い流れです。