北野天満宮のおみくじは、文言(右端部分の文章)に道真の漢詩を使っている、全国でも非常に珍しい(唯一の?)ものです。そこで実際に出典を調べてみたところ、「『菅家文草』が基本。でも一部出典不詳のものもある」という結論に達しました。
そこで第24番までの文言と出典を載せておきます。第25番だけは文言自体が不明ですので、御存知の方は「読者アンケート」で御教示下さい。
- 第1番「月輝いて清雪のごとし」
『菅家文草』01:001「月夜見梅花」第一句「月燿如晴雪」による。
- 第2番「寒中に早梅あり」
『菅家文草』01:049「晩冬過文郎中、翫庭前早梅」第二句の一部。
- 第3番「仙娥 弦いまだ満たず」
『菅家文草』02:107「夏夜対渤海客、同賦月華臨静夜詩」第三句。
- 第4番「馬やせて行く道しぶる」
『菅家文草』03:205「寒早十首(06)」第七句「馬痩行程渋」による。
- 第5番「千渓みちみちて一水しずかなり」
『菅家文草』01:009「八月十五夜、厳閤尚書、授後漢書畢。...」第二句「千頃汪汪一水閑」による。
- 第6番「氷なおこめて泉に伏する魚」
『菅家文草』06:445「同賦春浅帯軽寒、応製」第六句「氷猶冪得伏泉魚」による。
- 第7番「かえって喜ぶ春に向ってあえて遥かならざるを」
『菅家文草』01:002「臘月独興」第二句「還喜向春不敢〓」による。最後の一字が外字のため「遥」に改めたか。
- 第8番「靄靄として皆和気あり」
『菅家文草』01:010「重陽侍宴、賦景美秋稼、応製」第五句。
- 第9番「微微たる雨の足春の林を過ぐる」
『菅家文草』06:454「早春侍朱雀院、同賦春雨洗花、応太皇製」第二句。
- 第10番「夜深うしてわずかに微光の灯るなり」
『菅家文草』01:012「八月十五夜、月亭遇雨待月」第三句「夜深纔有微光透」による。
- 第11番「吏となり儒となり国家にむくいん」
『菅家文草』03:186「相国東閤餞席」第一句。
- 第12番「木こりは薪を負うて行くを嘆かず」
『菅家文草』02:146「相国東廊、講孝経畢。...」第二句「樵夫不歎負薪行」による。
- 第13番「胸の中の燈火つねに身をやく」
不詳。『菅家文草』04:254「対鏡」第十三句「未滅胸中火」によるか?
- 第14番「花は時に従がうがためになごりの色つきる」
『菅家文草』03:188「中途送春」第五句「花為随時餘色尽」による。
- 第15番「心むなしくする者は自由なり」
『菅家文草』03:236「舟行五事(04)」第十八句。
- 第16番「梅柳初めてきざして自ら開かんとほっす」
不詳。『菅家文草』06:430「早春内宴、侍清涼殿同賦春先梅柳知、応製」第一句「宮梅早綻柳先垂」によるか?
- 第17番「将来の暖気は誰か家に宿るや」
『菅家文草』01:002「臘月独興」第四句。
- 第18番「名山の秋の色は錦汎汎たり」
不詳。『菅家文草』『菅家後集』に類似句なし。
- 第19番「屈曲して初て用を知る」
『菅家文草』05:409「東宮寓直...(09)屏風」第一句。
- 第20番「雲はれて喜ぶべく又憂うべし」
『菅家文草』05:354「雨晴対月、韻用流字、応製」第一句「雲霽可歓又可愁」による。
- 第21番「扇は謝す三秋の月」
『菅家文草』01:013「秋風詞」第三句。
- 第22番「ただ梅風を指車となすべし」
不詳。『文草』『後集』に類似句なし。
- 第23番「限りなき恩涯止足を知る」
『菅家文草』06:444「敬奉和左大将軍扈従太上皇、舟行有感見寄之口号」第三句。
- 第24番「一栄一落これ春秋」
『菅家後集』付載。後人の書き付けによるもので、道真の作かは不明。
なお、文言の収集にあたっては、読者の方に多大な御協力を頂きました。感謝!
http://michiza.net/jtp/jtpkkuj.shtml